マーケティングオートメーションにより正しいキャンペーンROIを計測する方法
正確なマーケティングROIを把握すると、同じ広告予算で成果が上がる
多くの企業で、正確なマーケティングROIが把握されていないことが見受けられます。これは、WEB上で決済が完了しないビジネスモデルのケースでは従来から課題になっていたことでありました。しかし、近年ではマーケティングオートメーションを活用することで、流入ソースと受注までのフローが連携します。これにより、正確なマーケティングROIを計測することが可能となってきています。
広告業界では有名な百貨店王の名言があります。
“広告費の半分が金の無駄使いに終わっている事はわかっている。わからないのはどっちの半分が無駄なのかだ。”
デジタルテクノロジーが発展した現代では、この課題は解決できるようになっています。ただ、まだ多くのマーケティング組織では広告予算の配分が適正化されていないケースが多く感じます。
正しいマーケティングROIを計測できれば、同じ広告予算にも関わらず、予算配分を変えていくことでROI改善が見込めます。
正しいマーケティングROIを計測する方法
B2Bにおけるマーケティングでは、コンテンツマーケティング、リスティング広告、SEO、展示会、セミナー、ソーシャルメディアなどの施策を実施し見込顧客を獲得するケースが多くあります。
その時に、管理指標は何をもって計測しているでしょうか?
マーケティングオートメーションなどの高機能なマーケティングテクノロジーを導入していないケースであれば、見込獲得から受注までが正しく追えていない場合がほとんどではないでしょうか?
展示会やセミナーであれば、EXCELに管理する、インサイドセールスのような電話営業部門にリストをパスする、外勤営業がクロージングし受注する。が、一般的な営業フローかと思います。ここから、更に緊密にマーケティング部門と営業部門が連携を取れている組織では、リストのどの見込顧客が受注したかを1件ずつ確認すれば正しいマーケティングROIが計測できます。
ここまでできていないケースであれば、展示会に100万円の予算を投下し、100名のリストを獲得したため、獲得コストは1万円/人。といった指標管理までとなってしまいます。
リストからの商談化率が50%、商談からの受注率が20%、平均単価が50万円とすると、
100名(見込リスト)×50%(商談化率)×20%(受注率)×50万円(平均単価)=500万円
となり、100万円の投下に対して、500万円の売上でROASは500%といった指標となります。
これが単一の施策だけである場合であれば、正しくマーケティングROIが計測されますが、広告から50件、SEOから70件、展示会から100件、セミナーから20件とソースが複数存在し、どのソースからの顧客がどの受注かなどが確認できていなければ、正しいマーケティングROIはわからなくなってしまいます。そのため、一括して、「1,000万円の広告費に対して5,000万円の売上だから獲得コストは一律1万円が指標だ!」ということになってしまいます。
また、更に細かく計測すると、オンライン媒体の場合、「ビッグワード」「指名ワード」「○○○×価格」「○○○×スペック」などグルーピング管理するケースは良くあると思います。しかし、どのグループが受注につながっているのかを追うことが難しい状況でした。
図表化すると下図のようになり獲得コストが低い、リスティング広告が優秀なチャネルといった評価になります。
図1:どのチャネルの見込顧客が受注につながったかわからない場合(CPA指標)
チャネル | リスティング広告 | SEO | 展示会 | セミナー | 合計 |
広告費 | 500万円 | 200万円 | 200万円 | 100万円 | 1,000万円 |
獲得見込顧客数 | 625人 | 125人 | 200人 | 50人 | 1,000人 |
CPA(獲得コスト) | 8,000円 | 16,000円 | 10,000円 | 20,000円 | 10,000円 |
受注率 | 10% | ||||
受注数 | 100件 | 100件 | |||
平均単価 | 50万円 | 50万円 | |||
売上 | 5,000万円 | 5,000万円 | |||
ROAS | 500% | 500% | |||
施策の優先度 | ◎ | △ | ○ | ☓ | – |
ただ、ここで問題なのがどこからの見込顧客が受注につながったかわかっていないということです。受注率は一律で10%なのであれば、リスティング広告は優秀となりますが、もしそうでなければ無駄な広告費が眠っているかもしれません。
ここで、マーケティングオートメーションを導入している企業が見るROIはどのようなものでしょうか。
図2:どのチャネルの見込顧客が受注につながったかわかる場合(ROAS指標)
チャネル | リスティング広告 | SEO | 展示会 | セミナー | 合計 |
広告費 | 500万円 | 200万円 | 200万円 | 100万円 | 1,000万円 |
獲得見込顧客数 | 625人 | 125人 | 200人 | 50人 | 1,000人 |
CPA(獲得コスト) | 8,000円 | 16,000円 | 10,000円 | 20,000円 | 10,000円 |
受注率 | 4% | 20% | 15% | 40% | |
受注数 | 25件 | 25件 | 30件 | 20件 | 100件 |
平均単価 | 50万円 | 50万円 | |||
売上 | 1,250万円 | 1,250万円 | 1,500万円 | 1,000万円 | 5,000万円 |
ROAS | 250% | 625% | 750% | 1,000% | 500% |
施策の優先度 | ☓ | ○ | ◎ | ◎ | – |
上記のように、施策の優先度が全く正反対の結果となってしまいました。図1の指標では、
「一番獲得コストが低いとリスティング広告にもっと予算をかけよう」☓
となり、図2のように正しいROIを計測できていれば、
「リスティング広告の予算を減らして、展示会やセミナーにもっと予算をかけよう」○
となります。また、さらにリスティング広告のどのグループを停止してどのグループを残しておくかといったことも同様の指標で解決できます。
どちらがより多くの利益を生むかは一目瞭然です。
あなたの組織では正確なマーケティングROIが計測されていますか?
非常にROIの改善幅が大きくなる可能性を秘めているので、是非一度ご確認下さい。
最新記事 by Yukihiro Iwase (全て見る)
- 見込顧客獲得は1%を2%に増やすというより、99%のうち1%を獲得するという発想 - 2017-06-20
- [米国情報①]マーケティングオートメーションが成熟した時行く先は?米国METADATAという会社を調べてみる - 2016-08-31
- [コラム]大阪でマーケティング施策が浸透するのが遅い理由 - 2016-08-27